VXUS(Vanguard Total International Stock ETF)は、米国株の代わりではなく、「米国への集中を調整するためのETF」と考えるのが良いでしょう。
米国を除く先進国・新興国の大型株から小型株まで広く保有でき、VTIやS&P500を中核とする投資家にとって有力な分散手段になります。
VXUSとは
VXUSはFTSE Global All Cap ex US Indexへの連動を目指すETFです。
同指数は米国を除く先進国・新興国の大型・中型・小型株で構成されています。
2026年7月31日時点のVXUSは、
- 保有銘柄数:8,772銘柄
- 新興国比率:26.1%
- PER:16.5倍
- 経費率:0.05%
- 最大保有銘柄:TSMC、3.99%
となっています。
一言でいえば、
「アメリカ以外の世界株をほぼ丸ごと買うETF」
です。
世界GDPと株式時価総額は大きく違う
VXUSを理解するうえで重要なのが、世界経済の規模と世界株式市場の構成比は一致していないという点です。
少々細かい話をします。
IMFの2026年名目GDP予測では、世界全体が約126.3兆ドル、米国32.38兆ドル、中国20.85兆ドル、日本4.38兆ドル、英国4.26兆ドルである。したがって世界GDPに占める割合を計算すると、米国約25.6%、中国約16.5%、日本約3.5%、英国約3.4%となります。
一方、世界の投資可能株式の約99%をカバーするMSCI ACWI IMIでは、2026年7月31日時点の国別比率は米国62.56%、日本5.67%、英国3.27%、台湾3.14%、カナダ3.06%です。
| 国・地域 | 世界GDP比率 | 世界株式時価総額比率 |
|---|---|---|
| 米国 | 25.6% | 62.56% |
| 中国 | 16.5% | 約2.38% |
| 日本 | 3.5% | 5.67% |
| 英国 | 3.4% | 3.27% |
| 米国以外 | 74.4% | 37.44% |
※GDP比率はIMFの2026年名目GDP予測から算出。株式比率はMSCI ACWI IMIの浮動株調整後投資可能時価総額。中国の約2.38%は、ACWI IMIの時価総額113.627兆ドルとACWI ex China IMIの110.924兆ドルとの差から算出した概算値。
この数字をどう読む?
しかし、だからと言って
「米国GDPは26%だから米国株も26%にすべきだ」
と考えるのは間違いです。
GDPは国内で生み出された付加価値であり、株式時価総額は上場企業に対する市場評価。
さらに米国企業には世界中から売上・利益を得る多国籍企業が多いです。
一方、中国などでは非上場企業、国有企業、外国人投資規制、浮動株比率などの影響も大きい。
したがって、GDP比率は適正な株式配分を示すものではありません。
見るべきポイントは、
「世界株式市場は、世界経済そのものよりはるかに米国へ集中している」
という事実認識です。
現在、MSCI ACWI IMIに投資すれば約62.6%が米国株。
いくらGDP比率と株式時価総額はイコールではないとはいえ、ちょっと米国株に偏りすぎじゃないの・・・?という見方があっても当然。
VXUSは、この米国集中を意図的に薄めるための道具と考えることができるのです。
VXUSの良い点
最大のメリットは分散です。
約8,800銘柄に投資することで、日本、欧州、カナダ、台湾、中国、インドなどを一括して保有できます。
各国のファンダメンタルズを分析する必要もありません。
もちろん米国市場は含まれていません。
ただしこれは「米国株が下がればVXUSが必ず上がる」という意味ではありません。
しかし、ポートフォリオにVXUSを入れることで、米国一国・一部大型企業への依存度を下げる効果は出てきます。
経費率0.05%という低コストも長期投資には有利といえます。
VXUSの悪い点・リスク
米国に比べて成長率が高いとは限りません。
欧州や日本には成熟企業が多く、中国には政策・規制リスク、台湾には地政学リスク、新興国には政治・通貨・企業統治リスクがあります。
ヴァンガード社も、米国外証券には国・地域リスクと為替リスクがあり、新興国ではこれらのリスクが特に高いと注意しています。
また、米国企業の高い利益率や技術革新が今後も続けば、VXUSが長期間米国株に負け続ける可能性も考慮すべきです。
現在のバリュエーション
2026年7月末時点で、VXUSのPERは16.5倍。
参考としてMSCI USA IMIのPERは同時点で27.63倍。
指数・算出方法が異なるため完全な単純比較はできないものの、VXUSの方がかなり低い評価水準にあることは確認できます。
ヴァンガード社も2026年7月29日時点で、米国グロース株のバリュエーションが高いことなどから、長期では米国バリュー株と米国外先進国株を相対的に選好するとの見方を示しています。
では、いつVXUSを買うのか
投資のセオリーから考えると、最も合理的なのはリバランスです。
例えば、
米国株65%:米国外株35%
を目標としたとします。
米国株の上昇によって75:25になったなら、VXUSを追加購入して元の比率へ戻す。
これなら、
「上がった資産を追いかけ、下がった資産を売る」
という投資家が陥りやすい行動を防げます。
第二の買い場は、米国株とのバリュエーション格差が極端に広がったときです。
米国以外の企業の利益見通しが崩れていないにもかかわらず、米国株だけが大幅に上昇しPER格差が拡大したなら、VXUSの期待リターンは相対的に改善する。
第三は世界的な株価急落時。これは米国株の急落時ともいえます。
米国市場が下がり、さらにドルが安くなれば、それまで米国内にとどまっていた資産は、儲け先を海外に求めます。
ただし底値を見極めることは不可能と言えますし、当てる必要もありません。
マーケットタイミングを測らず、時期を分散して購入する方が現実的です。
VXUSをどう評価する?
VXUSは「これから米国以外の国が米国株を上回る」と予想して買うETFではありません。
本当の価値は、
米国株だけが永遠に勝ち続けるという一つのシナリオへ資産を集中させないこと
にあります。
世界のGDPに占める米国の割合は約26%なのに対し、世界株式市場では約63%を占めています。
これは米国株が異常という意味ではないものの、市場ポートフォリオをそのまま保有すること自体が、かなり大きな米国エクスポージャーを持つことを意味します。
したがってVXUSは、
VTIやS&P500を主役としながら、米国集中度を自分でコントロールする「分散装置」
として使うのが最も合理的と言えます。
そして長期投資家にとってVXUSを買いやすいのは、皮肉にも、
「米国株が強すぎて、VXUSなど持つ必要がない」と市場参加者が感じ始める局面
です。
そこでは米国株のウェイトとバリュエーションが上昇している可能性が高く、リバランスによって相対的に割安な米国外株へ資金を振り向けるという、投資の基本原則が機能するからです。

