「オルカン」の愛称でもすっかりお馴染みになった、全世界株式インデックスファンド。
全世界株式インデックスファンドとは、一つの投資信託で世界中の株式に分散投資が可能になるという金融商品です。
ところで一口に「全世界株式インデックスファンド」とは言っても、運用会社によってさまざまな商品が発売されています。
その数あるインデックスファンド、いったいどんなところが違うのでしょうか。
はじめに結論を言うと、採用されているベンチマーク(指標)と投資対象ファンドによって異なるのです。
この記事では、主要商品が指標にしているベンチマークと投資対象ファンドを比較しながら、違いをざっくりとまとめてみたいと思います。
(なおこの記事中のデータの値は2023年10月時点でのものです。)
ベンチマークと投資対象ファンドの違いから見る全世界株式インデックスファンド
さて、主要な全世界株式インデックスファンドは、ベンチマークとなる指標を採用しています。
そしてファンドの成績をそのベンチマークとなる指標の値動きに連動させることを目標に、投資対象ファンドを選択し運用しています。
つまり、どの指標をベンチマークとしているか、そしてそのベンチマークの値動きと連動させるためにどこへ投資をしているかが、各全世界株式インデックスファンドの主な相違点となっているのです。
それでは代表的な投資信託と、それぞれがベンチマークとして採用している指標と主な投資対象ファンドを比較してみましょう。
| 商品名 | ベンチマークとする指標 | 主な投資対象ファンド | 信託報酬(税込) |
| SBI・全世界株式インデックス・ファンド | FTSE Global All Cap Index | バンガード・トータル・ストック・マーケットETF、SPDR ポートフォリオ・ディベロップド・ワールド(除く米国)ETF、SPDR ポートフォリオ・エマージングマーケッツETF | 0.1102%程度 |
| SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド | FTSE Global All Cap Index | バンガード・トータル・ワールド・ストックETF | 0.1338%程度 |
| eMAXIS Slim 全世界株式 (オール・カントリー) | MSCI All Country World Index | 外国株式インデックスマザーファンド、新興国株式インデックスマザーファンド、日本株式インデックスマザーファンド | 0.05775%以内 |
| 楽天・全世界株式インデックス・ファンド | FTSE Global All Cap Index | バンガード・トータル・ワールド・ストックETF、バンガード・トータル・ストック・マーケットETF、バンガード・トータル・インターナショナル・ストックETF | 0.195%程度 |
ご覧の通り、一口に全世界株式インデックスファンドといっても、その中身が少しずつ異なっているというわけですね。
次に一歩踏み込んで、ベンチマークとして採用されている指標、FTSE Global All Cap IndexとMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)の違いについて触れてみたいと思います。
FTSE Global All Cap IndexとMSCI All Country World Indexの違い
ベンチマークとして採用されている指標である「FTSE Global All Cap Index」と「MSCI ACWI」。
どちらも全世界の株式市場をカバーする指数ですが、いくつかの点で異なっています。
ざっくりと比較してみましょう。
| FTSE Global All Cap Index | MSCI ACWI | |
| 投資対象 | 全世界の大型株、中型株、小型株 | 全世界の大型株と中型株 |
| 構成銘柄と時価総額カバー率 | 約9,000銘柄。全世界株式の約98%をカバー | 約3,000銘柄。全世界の約85%をカバー |
| 投資国数 | 47カ国 | 48カ国 |
FTSEの方が大型株から小型株まで、9,000銘柄を組み込んでいますので、分散投資という観点からは有利といえるかもしれません。
FTSE Global All Cap Indexの特徴
FTSEインターナショナルが算出するインデックスです。
大型株、中型株および小型株まで網羅する、全世界の株式市場の動向を表す時価総額加重平均型の株価指数です。
国・地域別構成比率
国及び地域別の構成比率をみると、アメリカが約6割を占めています。

セクター別構成比率
次にセクターの比率を見てみましょう。
国別比率でアメリカが突出しているためか、テクノロジーセクターが20%以上を占めています。

組入銘柄(上位10銘柄)
組入銘柄も見てみましょう。
組入銘柄は合計約9,000銘柄です。
上位にはアメリカの企業が並びます。
| アップル | 3.74% |
| マイクロソフト | 3.44% |
| アマゾン | 1.68% |
| エヌヴィディア | 1.51% |
| アルファベット(クラスA) | 1.14% |
| テスラ | 1.01% |
| アルファベット(クラスC) | 0.98% |
| メタ | 0.97% |
| エクソンモービル | 0.69% |
| ユナイテッドヘルス | 0.69% |
(引用:FTSE Global All Cap Index)
MSCI All Country World Indexの特徴
MSCI社が算出するインデックスです。
世界の先進国(23カ国)と新興国(24カ国)の株式の総合投資収益を各市場の時価総額比率で加重平均して指数化。
世界の株式の時価総額(浮動株調整後)の約85%をカバーしています。
国・地域別構成比率
国・地域別構成比を見ると、MSCIもアメリカが約60%を占めます。

セクター別構成比率
MSCIのセクター別構成比。
こちらもテクノロジー関連の比率が高めです。

組入銘柄(上位10銘柄)
MSCIの上位の組入銘柄です。
組入銘柄の総数は2,947銘柄です。
この点、組入銘柄の総数が約9,000のFTSEの方が、分散されているとは言えます。
MSCIの上位組入銘柄にも、アメリカの企業が並びます。
| アップル | 4.41% |
| マイクロソフト | 3.65% |
| アマゾン | 1.92% |
| エヌヴィディア | 1.76% |
| アルファベット(クラスA) | 1.27% |
| テスラ | 1.17% |
| アルファベット(クラスC) | 1.14% |
| メタ | 1.09% |
| エクソンモービル | 0.78% |
| ユナイテッドヘルス | 0.77% |
(引用:MSCI ACWI INDEX)
ベンチマークとして採用している主要海外ETF
この二つの指標を採用している主要ETFについて触れておきましょう。
上述したSBI・V・全世界株式インデックス・ファンドは、投資対象としてバンガード・トータル・ワールドストックを100%の割合で組入れています。
| ベンチマーク | ETF |
| FTSE Global All Cap Index | Vanguard Total World Stock バンガード・トータル・ワールドストック(ティッカーシンボル:VT) |
| MSCI ACWI | iShares MSCI ACWI ETF iシェアーズ MSCI ACWI ETF(ティッカーシンボル:ACWI) |
全世界株式インデックスファンドのメリット
最後に、投資先としての全世界株式インデックスファンドのメリットについて触れておきましょう。
その最大のメリットは、前述したように「一つの投資信託で世界中の株式に分散投資が可能」という点です。
投資は少なからず「リスク」を取って行うことになります。
そのため、同時に可能な限りリスクヘッジを考える必要が生じてきます。
(いや、オレにはリスクヘッジなどいらん、という猛者もいるのかもしれませんが・・・)
一般に、リスクヘッジの基本としては以下が挙げられます。
- 資産の分散
- 時間の分散
- 長期保有
全世界株式インデックスファンドは、この3つのリスクへの備えに適した投資先と言えるでしょう。
全世界の株式への投資(資産の分散)し、マイルドな値動きの中で長期にわたって定期的に購入する(時間の分散、長期保有)といったイメージです。
とはいえ、この点が全世界株式インデックスファンドのデメリットとも言えます。
つまり、短期でトレードしたいという場合はパフォーマンスが悪くなってしまう傾向がある、ということですね。
しかし、例えばiDeCoやNISAといった長期にわたる投資には、とても適していると言えるのではないでしょうか。



